販売されている原材料を見てみると。
地区/材料 原材料
北海道 いか、いか肝臓、食塩、砂糖、みりん、たん白加水分解物、ソルビット、調味料(アミノ酸等)、増粘多糖類※原材料の一部にゼラチン、及び大豆を含む
いか(岩内産)、塩2%、南蛮、砂糖、エキス、調味料
新潟県 するめいか、食塩、いか内臓、砂糖、味醂、ソルビット、調味料(アミノ酸等)、甘味料(ステビア、甘草)、着色料(紅麹)、PH調整剤
神奈川 昔ながらの製法で天日干し、塩・アミノ酸
気仙沼 いか,食塩,たん白加水分解物(大豆・小麦),ソルビット,調味料(アミノ酸等),酒精,糊料,(キサンタン),着色料,(紅麹・カロチノイド),メタリン酸Na,酸化防止剤,(ビタミンC),甘味料,(甘草)
い か の 塩 辛(食のサイエンス)
 いかの塩辛といえば、温かいご飯を、あるいは酒好きの人は居酒屋や日本酒を連想する人が多いのではないかと思います。

 昔のいかの塩辛は、塩味が強く独特なうま味のある食品というイメージがありましたが、最近は、消費者の低塩化志向から塩味を抑えた製品、また、熟成に時間をかけない製造法が主流となり、生いかに近い食感の製品が多く出回るようになってきました。

   そこで、最近のいかの塩辛の表示や品質の特徴的な部分を紹介します。
(小樽センター)

 全国8カ所の農林水産消費技術センターの所在地(小樽、仙台、東京、横浜、名古屋、神戸、岡山、北九州)近郊で販売されていた30製品について平成7年度に調査しました。

1.食塩分

a.低食塩分をセールスポイントに
 食塩分に関する表示として「甘口」、「うす塩」、「塩分ひかえめ」、「塩分は抑えている」、「甘塩」などがあり、また、「塩分6%以下」、「塩分含有率6%」という、より具体的な表示もありました。

 一方、食塩分が多い製品の中には、「食べすぎにご注意下さい」という表示もありました。

b.塩辛くない塩辛が主流に
 実際に食塩分を測定した結果、100g当たり3.4〜15.1gと11.7gもの差がありました。また、平均値の6.4gを超えたものは6点で、四訂日本食品標準成分表の値の11.4gを超えるものは1点のみでした。

低塩分関連の表示があるものはすべてが平均値より低く、低塩分関連の表示がないもの(15点)でも9点が平均値より低いという結果でした。

 今回の調査結果と過去の文献データ(藤井建夫著「塩辛・くさや・かつお節」(恒星社恒星閣))を比較してみました(図1、2参照)。

 図2の点線は製品群の食塩分のピークを示します。今から20年ほど前の製品の食塩分は、ほとんどが12〜13%でしたが、その後、低塩分の製品がだんだん増えてきて、製品全体が低塩分へとシフトしていることがよく分かります。

 一方、食塩分を減らすと保存性が低下しますので別の保存手段を考える必要があります。


2.保存性

a.水分活性はどのくらい
 水分活性とは、食品中で微生物が利用できる水分を示します。
 微生物の種類によって異なりますが、一般に、細菌の増殖を抑えるためには、水分活性を少なくとも0.90以下に保つ必要があるといわれています。
調査の結果では、0.792〜0.925で、平均は0.904でした。0.90を超えるものが22点(73%)と多く、この水分活性では、保存性が高いとはいえません。
 
b.保存性を補う原材料
 原材料表示から、低塩化により低下した保存性を補うための原材料をみると、使用頻度の高いものには、ソルビトール、アルコールがあります。
 ソルビトールは糖アルコールの一種で、甘味原料としてだけでなく水分活性を下げるために使用されていると考えられます。また、黒作り(いかすみを加えて作った塩辛の種類)の黒色の元であるいかすみにも防腐効果があるといわれています。
c.未開封でも冷蔵庫で保存
 保存方法は、最も食塩分の高かった製品を除く29点に冷蔵保存の表示がありました。保存温度の表示が24点にあり、10℃以下が最も多く12点、8℃以下が2点、5℃以下が10点(5℃前後1点を含む)と製品による違いがみられました。
ちなみに、未開封の保存期間は20日〜1ヶ月のものがほとんどでした。

3.うま味成分

a.うま味を補う原材料
 原材料表示からうま味を補うものをみると、調味料、たん白加水分解物(*1)かつおエキス、魚醤などがあり、調味料は全製品に使われていました。
b.アミノ酸が特有のうま味を作る
 代表的なうま味の成分といえばアミノ酸があります。遊離アミノ酸を調べると、グルタミン酸、グリシン、アラニン、タウリンが多く含まれていました(表参照)。

 このうち、グルタミン酸をはじめ、グリシン、アラニンは製品によって含有率に大きな差があったことから、これらのアミノ酸の添加がうかがえました。

 タウリンは、本来「いか」に多く含まれるアミノ酸です。グリシンは、「いか」や「えび」に多いうま味成分です。アラニンは上品なうま味を持っています。

 また、グリシン、アラニンはともに塩蔵品の塩なれ(多量の食塩を含有する食品がうま味などによってそれほど塩味を感じないようになる)の効果もあります。

図1、図2 表
表 イカの塩辛の主な遊離アミノ酸(mg/100g)
遊離アミノ酸   最小値     最大値  
総アミノ酸 1263 15173
グルタミン酸    188  9510
グリシン   30  2524
アラニン   70  2409
タウリン   96   680


*1加工調理された食品の味をさらに美味しく、深みのあるものにし、添加されている調味料の味を引き立たせる物で、大豆などの植物性由来のたん白質やゼラチンなどの動物性由来のたん白質を、酸や酵素で加水分解し、中和、脱色、脱臭、精製、濃縮してペースト状や粉末状又は液体状にしたもので、アミノ酸が何万個もつながって出来ています。 たん白質自体には味はありませんが、これを構成するアミノ酸は単体になると、うま味や苦味を感じるようになります。 具体的には、動物性のものは、牛肉や豚肉の筋の部分などのたん白質が多く利用され、植物性のものは、大豆、小麦、とうもろこしなどのたん白質が利用されています。 食品には風味調味料、乾燥スープ、ハム・ソーセージ類、魚肉ハム、調理冷凍食品などに使われています。
出典 「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1996年9月 第29号より
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