(2014第7回)メリケン国西部 大自然を訪ねて −第7回−


 メリケン国の大自然を巡ってきた私たち一行。いよいよホテル泊は、今夜が最後。その一夜を、かの有名な町、ラスベガスで過ごそうとしている。

【第5日目 6月30日(月)セリグマン〜ラスベガス】

ルート66とアリゾナ州セリグマン


 前回は、銃犯罪の話から、旅行記が脇道に逸れてしまった。失礼!

1950年代の面影を留めるセリグマンの町 私たちは、ラスベガスへ戻る途中、ルート66沿いの
アリゾナ州セリグマンという町に立ち寄る。人口500人ほどの小さな町である。
 道沿いに1kmほど店が並んでいるだけの町だが、旅番組などでもよく取り上げられる
観光スポットになっている。

 メリケン国の国道66号線は、全長3,755km(2,347マイル)。イリノイ州シカゴとカリフォルニア州サンタモニカを結ぶ主要国道として、この国南西部の経済産業発展に大きく寄与してきた。しかし、州間高速道路の発達によりその役目を終え、1985年に廃線となっている。

 
「このままでは町もルート66も廃れるばかり」と危機感を抱いた住民がいた。理髪店を営むエンゼルさんとアイスリーム店のホアンさんである。2人は、アリゾナ州政府に働き掛け、ルート66の復活運動を起こした。
 そして、1950年代の面影を残す町並みの再現に取り組み、
懐かしい時代にタイムスリップしたかのような風情が人気を呼んで、大勢の人たちが訪れる名所になっている。

 エンゼルさんが営んでいた理髪店。壁一杯に観光客が貼っていった名刺が並んでいる。表通りには、古い店構えの商店、クラシックカーや昔懐かしいガソリンスタンドの給油機など。私も、今は理髪店を廃業して土産物店になっているエンゼルさんのお店に入り、使い古された理髪椅子なども垣間見て、かつての古き良き時代を偲んでみた。

 なお、ルート66は、現在、旧国道66号線(Historic Route 66)として、国指定景観街道(National Scenic Byway)に指定されている。

再びラスベガスへ

車窓から見えたフーバーダム セリグマンを後にして、ニューディールで知られたフーバーダムを車窓に眺めながら、ネバダ州ラスベガスへ向かう。今夜は、初日に泊まったのと同じホテルに泊まる。

 ラスベガス(Las Vegas)は、「肥沃な草原」という意味のスペイン語。その名のとおり、ネバダ砂漠の中の窪地でありオアシスとなっていた。1800年代のゴールドラッシュ、鉄道開通を経て、20世紀に入ってからフーバーダムやネバダの軍事施設の建設に伴って、その関係者が町に住むようになった。

 そして、現在ではご存知のような
「カジノの都」として世界中に知られる町となっている。人口は50万人ほどだが、年間の観光客が約3,700万人。世界の12大ホテルのうち11軒がこの町に所在するという大歓楽地であり、24時間眠らない街として知られている。
 ただ、前述のとおり、カジノの売り上げ世界一の座は、2008年以降、マカオに明け渡している。

砂漠の中に造られた町 ラスベガス そのラスベガスが近づいてきた。遠目に見ると、この町が
「砂漠の中に現れた高層ホテル群」であることがよくわかる。

暑くて熱い町 ラスベガス

 ホテルに着いた。バスから降りると
暑い!既に夕方だというのに、30℃は確実に超えている。早々に建物の中に逃げ込む。熱いギャンブルの町は、気温まで暑い。

 今夜の食事は、旅費に含まれていないので、各自、お店を探してとらなければならない。私は、同じ一人参加の福山さんと相談して、添乗員の萩本さんが渡してくれたイラストマップの中から、安西さんご推奨の日本料理店に行ってみることにした。

 その前後に、この町名物のショーを見たい。私は、オプショナルツァーで募集していたシルク・ド・ソレイユのサーカスを観覧したかったが、催行人数の6人が集まらず、諦めたのだ。

街中には、モノレールや観覧車も それでも、各ホテルが客寄せのため、
無料で公開しているショーがあって、それもなかなか見応えがあるという。ならば、というわけで、食事がてら、福山さんと観に行くことにした。

 ホテルのフロント前で北海道のヒョーキンおばさん2人連れと鉢合わせ。
「一緒に行ってかまいませんか?」と言う。もちろん歓迎。「どうぞどうぞ」と答えた。 

無料エンターテイメント −その1−

 4人連れだってマップを見ながら歩く。まだ明るいのでこの町名物のネオンは煌めいていない。
暑い!だから一歩たりとも無駄足を踏みたくない。方向音痴の私は、ほかの3人にナビを任せて歩みを続ける。

ここはパリ? いいえラスベガスです カジノをハシゴする客のためのモノレールやエッフェル塔を横目に見ながら、汗をぬぐう。ペットボトル入りミネラルウォーターの路上販売があちこちに。氷水に浸したボトルが、飛ぶように売れている。

 歩道にマリリンモンローそっくりのお姉さんが、艶然と微笑みながら立っていた。どうやって風を送っているのか、スカートの裾がまくれ上がり、その裾を押さえている。写真を写したらモデル料を求められるに違いない。それで彼女は生計を立てているのだろう。

 さて、無料ショーである。最初に向かったのは、
噴水ショー
 それだけ聞くと「何が面白いの?」と聞かれそうだが、
「とにかく見事!必見!ラスベガスで最も人気がある無料アトラクション」と聞いて、「ベラージオ」というホテル前まで足を運んだ。

有名な噴水ショー 5万平方mという広い池「コモ湖」の前には、既に大勢の人。30分おきに上演されるというので、なるべく涼しくてショーが見やすい場所を探して待機する。

 やがて、音楽が響き渡り、いよいよ噴水ショーが始まった。池の水が、音楽に合わせて、ダンサーが舞い踊るかのように、高く低く、回ったり横を向いたりしながら噴き出す。
これは完璧に芸術である。1,000機を超えるハイテク噴射装置が使われているのだそうだ。

 今はまだ周りが明るいが、暗くなったらライトアップされて、さらに素晴らしい「演技」が見られるという。

日本食レストラン


「親子丼」は、なぜか丼ではなく重箱に入れられていた 噂の噴水ショーを堪能した後、お次は「火山の噴火ショー」を見ることにしたが、開始まで時間があるので、先に日本食レストランで食事をとることにした。
 この町にもあちこちに日本食レストランがあって、目指す店は、その中でも有名店らしい。

 ホテルの中にその店はあった。あまり混んでいない。店構えは純日本風。メニューに英語表記がなければ、日本国内にいるかと勘違いしそうなくらいである。着物を着たウェイトレスに、福山さんはカツ丼、私は親子丼、北海道の2人はザルソバと天ぷらのセットを注文した。日本円換算で
カツ丼が2千円、親子丼が1,800円ほどだっただろうか。やはり、日本よりかなりお高いが、ここはメリケン国である。それと、もちろんビールも注文。

 周りを見回すと、日本人の姿は見えず、白人が多い。みんな上手に箸を使っている。

 料理が運ばれてきた。
「親子丼」なのに、なぜか重箱入りである。お味のほうは文句なし。おいしい。

ATM初体験の時に・・・

 食事しながらヒョーキンおばさん2人組の話を聞く。

 2人とも、お住いは稚内に近い山間。最も近い量販店まで車で1時間だとか。

 その一人、大石さんが最近、
生まれて初めて農協のATMを使ったそうだ。店舗外に設置されている機械なので、無人である。初めてとあって、操作の仕方がよく分からず、現金が出てこない。彼女は、防犯カメラに向かって「機械からお金が出ません!」と訴えたそうだ。

 当然、無反応。仕方がないので、近くにある役場の支所に足を運び、職員に助けを求めて言ったという。
お金の自動販売機からお金が出ません!」

 もう
大笑い。もし、笑い姫こと焼津の友永夫人が同席していたら「キャハハハハハハ」という声が聞かれただろう。
 火山の噴火ショー笑いこそ、食事の味を引き立てる最高の調味料である。

無料エンターテイメント −その2−


  さて、お腹が一杯になったところで、次のショーを見に行く。ミラージホテル前で行われる「火山の噴火ショー」である。周りも少し薄暗くなったので、ちょうどよい頃合いだ。

 このショーは、1時間に1回の上演なので、少し急ぎ足で歩く。こちらの方も既に大勢の観客がホテル前に設えられた「火山」の前に詰めかけていて、開演を待っていた。

噴火ショーにも大勢の観客が やがて、太鼓の音が響きわたる。南の島の雰囲気が漂う中、大きな
爆発音が響き、勢いよく火山が火を噴いた。溶岩が赤く光りながら流れ出る。続いて山腹の割れ目からも溶岩流が。爆発を繰り返すたびに音響が鳴り渡り、さらに溶岩流が。ハワイ島のキラウエア火山を髣髴とさせる、なかなか手の込んだ演出である。
 ショーの時間は4分ほどだというが、それ以上にずっと長く感じた。

 ショーの後は、ホテルの自室へ直帰。カジノに行くこともなく、大歓楽地ラスベガスの夜は、
至って品行方正に過ごした。


 メリケン国の大自然を訪ねるこの旅も、いよいよ大詰め。明日はロサンゼルスとその周辺を巡った後、夜行便で帰国の途につく。
 サンタモニカの海岸など、実質この旅最後の日の模様は、次回以降に。

−続く−


(2015/02/01)




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